ネ ツ ビョ ウ。















―欲しいものを欲しいと言って、何が悪い―




















空には金色に輝く満月
時折聞こえてくる虫の音が心地良く耳に響き、涼しい夜風が頬を撫でる。
隣には、君


今夜は美味い酒が飲めるに違いない、そう思っていた。




「うぅ・・・ん」
「・・・・・。」


月明かりの落ちる縁側で、男と女が寄り添い合っていた。
脇には飲みかけのお猪口が二つ仲良く置かれている。
月見酒にはもってこいの美しい秋の夜だ。
さぞ甘い時間を過ごしているに違いない。


・・・はぁ。


それにしては重いため息が零れていた。
月になど興味はないとばかりに、剣心の瞳はさっきからずっと隣に座る恋人を捕らえていた。
しかしその顔は、とても不満気だ。


すぅー・・・。


剣心の肩に頭を乗せて、薫は気持ち良さそうに寝息を立てていた。


「なんでこうなるかな・・・」


二人を照らす満月だけが剣心の本音を聞き届けてくれた。


酔わないように、ほんの少しだけ飲ませたのに。
身体が温まる程度に
ほんのり良い気分になる程度に


それなのに、薫はほんの一杯で潰れてしまった。
いや、眠ってしまった。
すぐにうとうとし出し、右へ左へ身体を揺らしていくうちに
終いには首が前へ後ろへ踊り始めた。


剣心が肩を貸してやると、頭が安定したことで落ち着いたのか
あっという間に寝息が聞こえてきた。
気持ち良さそうに眠る薫と反対に、剣心は深く肩を落としていた。


「ん・・・」


楽な体勢を求めて薫が無意識に身体を摺り寄せてくる。
嬉しいけど複雑なこの状況に、剣心は再び重いため息をついた。


月があまりにも綺麗だったから、風呂上りの薫を引き止めた。
明日は稽古も休みだし、月見酒を楽しみながら二人で過ごそうと思ったのだ。
そしてほど良く酔った所で誘うつもりだった。
寝所に、だ。
ここの所ずっと忙しかった彼女を今夜はようやく一人占めできると思ったから。


それなのに、この様だ。


薫の濡れた髪が剣心の肌に絡みつく
そこから香る甘ったるい香りは、まるで媚薬のように剣心の鼻を刺激した


ちょっとでも薫が身体を動かせば、その振動が甘い刺激となって剣心に伝わった
小さく開いた唇から零れる吐息が剣心の胸元をかすれてはくすぐる
薄い寝巻きの上から見え隠れする薫の肌が、月に照らされて一層白く見えた


嬉しいを通り越して、つらかった。


触れたいのに触れられない
傍にいるのに何もできない


それがどれだけ男心をかき乱すのか、彼女はもう少し知っておくべきだ。
一体何度こんな状況に陥ったことか。
そして一体何度、こんな風に自分を抑えては我慢に我慢を重ねてきたことか。
こんなの、生殺しだ。


「・・・部屋に運ぶか・・・」


このままでは風邪を引いてしまう。
待っても起きる希望は少ないし、無理やり起こすのはさすがに気が引ける。
すっかり冷めてしまった酒をこれ以上飲む気にもなれないし
さっさとお開きにしてしまおう。
一人でやけ酒なんて、ごめんだ。


仕方なく剣心は薫の身体に腕を回した。
起こさないように、そっと抱き上げる。


「・・・・・・・・。」


柔らかい。


あまりにも触り心地が良くて、剣心は思わず上げかけた腰を下ろした。
横抱きにした薫の身体をそのまま膝の上に乗せてみる。


「んー・・・」


薫は一度窮屈そうに身を捩らせたが、
剣心に抱きかかえられて温かくなったのかそのまま動かなくなった。
相変わらず規則正しい寝息が聞こえてくる。
より近くなった薫の唇からかすかに酒の匂いがした。


温かくて気持ち良い。
できるものならずっとこうして抱きしめていたいものだ。
剣心の頭を、不埒な思考が横切った。


―少しだけ・・・


そう言い聞かせるように心の中で唱えながら、剣心は薫の身体にそっと手の平を這わせた。
肩から滑るように剣心の手が二の腕を降りていく。
布越しでも柔らかい薫の身体。
触れた部分からじんわりと薫の温かい体温を感じた。


最初は遠慮がちだったその手が、次第に落ち着きを失っていった。
綺麗な曲線を描いた腰の辺りを彷徨えば、もっとその上にも触れたくなる。
一瞬ためらうように手を止めたが、柔らかい膨らみを感じた途端触らずにはいられなくなってしまった。
胸が熱くなるのを感じた。
心臓が異常にはやく音を立てる。


「ん・・・」


起きたら怒られるな・・・


そう思いながらも手は薫の胸から離れようとしなかった。
形を確かめるように下から何度も撫で上げる。
先端の尖った部分が、指先でこする度に少しずつ硬くなっていくように感じられた。
自分でも気づかぬうちにもう片方の手が薫の太股を行き来して・・・


「―・・・あ、だめ・・・」


突然発せられた薫の言葉に、剣心は思わず手を止めた。


起きたのか?


そう思った瞬間、突然罪悪感に襲われた。


やっぱりいけない。
寝ている薫にこんなこと・・・


「もうだめっ・・・だってばぁ、あ・・・」
「薫殿・・・?」


薫の様子がおかしかった。
もう触れていないのに、薫の口から否定の言葉が続く。
それはひどく、悩ましげな声だった。


剣心の胸が、興奮でかっと熱くなった。


「や・・・」
「薫殿、まさか感じて・・・」
「だから、食べれないんだってばぁあ・・・」
「―は・・・?」
「くるし・・・も、いらな、い・・すぅー・・・」
「・・・・・・。」



それはないだろ。
再び眠り出した薫を剣心は睨むように見下ろした。


ずいぶんと厭らしい寝言だ。
そう思ったのは剣心だけで、当の薫は健全極まりない夢を見ていたに違いない。


本当に、どこまでも期待を裏切ってくれる。
夢の中で満腹になった薫の寝顔はとても満足そうだった。
それはもう、頭にくるくらい。



―欲しい


ほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしい


触れたくて、しょうがない


抑えていた欲求が、


情欲が、


肉欲が


突然嵐のように剣心の中で暴れ出した。



痺れを切らした剣心は横抱きにしていた薫の身体を強引に動かし
向き合うように体勢を変えさせた。


「ん・・・剣心・・・?」


脚を開かせて身体を跨ぐように座らせると
その振動で薫がようやく目を覚ました。
どこか気だるげな声は、今だ夢の中を彷徨っているようだった。


「そのまま寝てていいでござるよ」


かまわずに剣心は目の前にある薫の胸元を片手で押し開くと、 そこに顔を埋めた。
猫のように舌を出して、そこに吸い付く。


「ひゃっ、なになっ・・・!?」


強い刺激に薫がはっきりと意識を取り戻した。


「け、剣心?やだやだなんでっ・・・」


わけがわからない薫は必要以上に動揺し、剣心から逃れようと身体を捩った。
しかし剣心は薫の腰をしっかりと抱いて離さない。


「薫殿・・・」
「んっ・・・」


剣心は強引に薫に口付けると、そのまま薫を床に押し倒した。
抵抗する手にかまわず薫の寝巻きをたくし上げると、脚の付け根の間に指を押し入れた。


「あっ・・・!」
「ん、かおるっ・・・」


指を包む温かくて柔らかい感触に剣心が喉を鳴らした。
耳に響く水音に駆り立てられて、勝手に指が動く。
愛撫を与えながらもどかしげに腰紐を解き、下帯を緩めた。
剣心の性急な行為に、薫がいやいやと首を振った。


「剣心、待って!まっ・・・」
「嫌でござるか?」


胸を押し返す手を掴んで剣心が言った。
大きな瞳が揺れている。
その瞳を、じっと見つめ返した。
床に散らばる髪が月光の下で艶を放ち、妖しく剣心を誘う。


ひどく呼吸が乱れていた。
身体が熱い、熱い―


「嫌?」
「あっ・・・」


熱くてどろどろに溶けてしまいそうなそれを押し付けて、
もう一度尋ねた。
ぬるりとした感触が糸を引いて摩り合う。


「―嫌?」


急かされて、薫の唇が小さく動いた。


「い、嫌じゃなっ・・・ん!」


その言葉が終わるより先に、剣心が腰を沈めた。


「あっ・・・あぁあ、ん・・・っ」


薫の膝裏を押し上げて脚を開かせ、どんどん奥へ入っていく。
きしっ、と床が鳴った。
薫は下半身の圧迫に絶えるように眉をゆがませ歯を食いしばっていた。
しかしその表情は苦しいというよりはどこかせつなげだ。


「・・・嫌・・・?」


最後に剣心がもう一度尋ねた。


「っ・・・ぅ・・・」


薫が小さく首を振った。
返事をする代わりに薫の手が求めるように剣心に伸ばされた。
その手に指を絡め、強く握り返す。



「薫・・・」



金色に輝く満月に背を向けて、剣心は身体に溜まった熱を夢中で薫にぶつけ続けた。





―欲しいものを欲しいと言って、何が悪い―





美しい月がどうした
美味い酒がなんだ



君以外欲しいものなんか何もない
飼い慣らすことのできないこの貧欲な熱を、冷ましてくれるだけでいい



あんまり焦らすと、またこうやって暴れるよ
























* * *

お友達のえりちゃんが描いてくれた剣さんがあまりにも、

あっまりにもきゃわいらしかったので 書いてしまいました焦れ剣。

しかも今ならエロだって書けるさの勢いで

いつも焦れて終わる剣さんを 攻め剣に進化させてみた。

もーこの緋村さん素敵過ぎ。萌え殺だ。

薫殿の寝顔可愛過ぎ。生殺しだ。

焦れ焦れ焦れ焦れ・・・もんもんもんもん・・・。

ちなみに話のネタはえりちゃんも一緒に考えてくれました。

ぱぱいやから始まった二人の妄想劇。

愛の変態妄想合作、お読みいただきありがとうございました。

10,15.2006

Eri & Anne

* * *






















































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